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60年の歴史 第4章

第1節 業界に先駆けたコンピュータ化

ソフトの蓄積で新領域へ

1987年(昭和62)10月19日月曜日に起こったニューヨーク株式市場に端を発した過去最大の株価暴落は、アメリカの財政赤字と貿易赤字に加えて、85年のプラザ合意後のドル安打開のために金利が引き上げられるという観測が広がっていたことが要因だった。さらに、普及し始めていたコンピュータによるプログラム取引が、一定程度株価が下がると損失を最小限に留めるために自動的に売り注文を出すことで、負の連鎖が起きたことも一因だった。これに対して日銀は金融緩和策を採りつづけ、日経平均株価は半年後の88年4月には下落分を回復、始まっていたバブル経済の膨張を止めるほどではなく、金融緩和と景気拡大のなかで、企業は事業の多角化、海外進出を積極的に展開した。

CAD/CAM

88年9月1日付の日刊工業新聞は、「富山県金型業界体質改善を積極推進〜円高、国際化に対応」のタイトルで、県内各金型企業が、国際化、経営の多角化、設備の近代化・合理化に取り組んでいると次のように紹介した。

「富山県の金型業界はプラスチック金型を中心に、130から150社ほどの業者がある。受注量は昨年後半から回復基調にあり、……各メーカーはフル操業状態。しかし、ユーザーの値引き要求は厳しく、収益面では依然苦しい。これに加え、今後、ユーザーの内製化や海外シフトなど懸念材料もあり、各メーカーは長期的な観点での対応を迫られている」「強化策の内容は、①国際化戦略、②経営の多角化、③設備の近代化・合理化の3点に集約できる」とし、すでに先んじて設備の近代化を果たした当社の場合は、次の戦略としてソフト販売を開始したと紹介している。

これは、多分に89年(平成元)に開始したリケンに対するCAD/CAM技術指導を指しているようだ。これは、浩史専務が、東京エレクトロン株式会社の依頼で行った。東京エレクトロンは、半導体製造装置のサプライヤーで、当時コンピュータ・ビジョン社の日本総代理店であった。当社も同社を通してCAD/CAMを導入しており、浩史専務のアメリカ視察には同社からも2人が同行した。導入後の当社の活用状況をみて、リケンに納入する際の指導を浩史専務に依頼してきたものである。リケンは、自動車はじめ航空機、船舶などに欠かせないエンジン部品であるピストンリングを日本で初めて実用化し、世界2位のシェアを持つ企業であったが、この指導が縁で、1987年のリケン柏崎事業所との取引とは別に、リケン本社との太いパイプができ、ホンダ(本田技研工業株式会社)、スズキ(スズキ株式会社)向けのナックル(鋳物)を受注するようになった。

91年には、小松ソフトウエア開発が開発した凝固解析ソフト「SOLDIA」の販売権を獲得した。これは、開発した「CADDSOLD」を利用し、凝固流動解析ソフトの販売事業の一環として解析データサービスを開始したのである。これを94年1月15日付の「ダイカスト新聞」は、次のように報じている。

見学に訪れた工場見学参加者

NCデータ伝送システム

この流動凝固解析システム「SOLDIA」は、溶湯が金型内で流動、充填、冷却、凝固していく過程をコンピュータによってシミュレーションするもので、湯回り不良や湯境いの発生などの湯流れに起因する欠陥の予測、初期温度分布を考慮した凝固解析、最適なゲート設計などが可能となる。この解析システムでは、3次元形状内の流れをみることができ、流体は非圧縮粘性流体を仮定し、慣性力、粘性力を考慮した非定常解析を行う。また充填過程での溶湯と金型の温度分析を計算し、その結果をもとに凝固解析する。凝固解析は凝固時間や温度分布による引け巣の発生場所を予測し、冷却や保温による引け巣位置の移動、消失効果をシミュレーションする。

こうした流動・凝固解析から金型温度分布や適正ポイント上での温度変化曲線から金型内冷却系やサイクル中での各工程時間の最適化を導くことができ、最適方案の決定が容易となる。

92年11月には浩史専務がコンピュータ・ビジョン社ユーザー会幹事の住友金属工業、三洋電機、本田技研工業、三菱重工業、鹿島建設、電源開発のシステム部門責任者との共著で『現場のCAD/CAM』(日本工業新聞刊)を発刊するなどし、CAD/CAM、CAE、CAT(Computer Aided Testing)などCIM(Computer IntegratedManufacturing system)の新たな領域への可能性を探った。93年には小山鋼材株式会社と代理店契約を結び、同社の販売ルートで流動凝固解析データサービスを開始した。94年10月には高岡短期大学を会場に開催された第135回全国鋳物工業学会に浩史専務が講師として招かれ、「SOLDIAを使った鋳造解析で見える化」をテーマに講演。鋳造解析現場を見ようと、会社にも多数の見学者が訪れた。

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